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平成12年6月の一般質問

市民クラブの中道です。事前に行いました通告に従い市政一般質問を行います。

質問は、2つで、「5次総・基本計画におけるミッションとビジョンの政策評価と執行評価」、そして「2,002年の教育改革は大丈夫か」、について質問を行います。

 初めに、第5次多治見市総合計画の基本計画・素案に対する質問を行います。私の5次総に関する質問は、今回が4回目であります。過去3回の質問は、基本構想を題材に、4次総の総括や市民意識調査、及び多治見市の現状と目指すべき将来像や市民参加のあり方など、主に総合計画を策定する際の観点や、切り口に関する質問でありました。

執行部は、この5月に基本構想をより具体化した基本計画の素案を公表されました。この中で、執行部は、基本計画は基本構想に基づいて必要な施策を体系的・具体的な事業計画として明らかにし、実施計画と展望計画に分類するものであると、定義しています。つまり、執行部は、この基本計画が5次総の全貌であるかのごとく表現していますが、もし、この基本計画が5次総の全てであるとするならば、本来あるべき総合計画の内容としては、次の点で、著しく不十分であると言わざるを得ません。

第1に、計画の条件設定が不十分であります。総合計画の策定には、策定期間である10年間の人口の予測、市の財政と市民の雇用を推測する産業フレーム、土地の利用や都市計画のフレーム、そして将来の交通量を予測する交通フレーム等がないと、正確かつ具体的な総合計画を立案することはできません。しかし、この度、公表された基本計画には、人口フレーム以外のものは、見当たりません。

第2に、基本計画には、市民自治システムの施策がありません。5次総のキャッチフレーズは、「21世紀、市民の鼓動が響くまち、多治見」であります。つまり、5次総は市民が主人公のまちを作ることを最大の眼目として謳っています。それにもかかわらず、計画には、市民一人一人に対する市民参加のシステムや、地域社会での自治会を中心としたコミュニティのシステムに対する具体的な政策が見当たりません。

第3に、総合計画策定において最も大切な、多治見市の戦略的展開の記述がありません。少なくとも、今、質問の最大のテーマとしているミッションとビジョンが、計画の中で識別されていません。ミッションとビジョンについては、後でまた述べますが、ミッションとは市役所の行政的使命のことであり、ビジョンとは多治見市民が望む戦略的政策のことであります。

つまり、市役所が本来市民に提供しなければならない最低限の行政サービス、すなわちシビルミニマムと、市民が望む将来の多治見市の姿、すなわちビジョンとの両者が識別されずに記述されているのです。そして、特に、将来の多治見市の姿に関する戦略的政策が見当たりません。

第4に、地域整備計画がありません。現在、執行部は、5次総と同時並行的に都市マスタープランの地区別構想を、地域住民を交えた「まちづくり研究会」で策定中であります。研究会は成果物を「地区別構想の体系」と「現況と課題から見た対応の方向性と具体的取り組み」にまとめる予定でありますが、基本計画の中には、これらのものが見当たりません。また、基本計画と、これらの成果物がどのようにリンクし、かつ位置付けられるのかが不明であります。

第5に、財政と用地の計画がありません。第6に、国に対する政策がありません。

以上のように、今回公表された基本計画の素案は、1つの市の総合計画としては、大変不備が目立ちます。今後、素案が原案となり、基本計画が実施計画となる過程で、これらの不備が解消されるものと期待しております。

しかし、一方で、前回の4次総と比較いたしますと、今回の基本計画では5年以内に実施する施策と、10年以内に実施する施策が区別され、担当課を明示するなどして、どこの課が何時までに実施するのかを公表したことは、非常に大きな前進であると評価しております。

 一方、政府の中央省庁等改革推進本部は、中央省庁等改革基本法に基づき、平成11年1月に、中央省庁等改革にかかる大綱を制定し、同じ年の4月には、中央省庁等改革の推進に関する方針を決定いたしました。その中で特徴的なことは、基本法第三条第6項で、「国民的な視野に立ち、かつ、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた客観的な政策機能を強化すると共に、評価の結果が政策に適切に反映されるようにすること」とあります。

つまり、改革推進本部は、政策機能評価の強化と、その反映を求めています。

中央の各省庁は、基本法が施行される来年の1月1日に向け、政策評価の客観性を確保するため、評価の対象とする政策の性質等に応じた評価手法で、かつ評価指標の体系化や評価の数値化・計量化などの合理的で的確な評価手法を研究・開発中であります。

このため、中央省庁では政策評価が一種のブームとなっていますが、その中で、建設省は、最近アメリカの多くの自治体で採用されているバランス・スコアカードに注目しています。バランス・スコアカードとは、次の4つの視点を持っています。なお、バランス・スコアカードの詳細については、事前に資料を執行部に配布してあります。

@ 従来の執行評価は、前に述べたように戦略的政策に対する優先順位の位置付けがありません。市民には行政的使命と戦略的政策の違いは説明されておらず、財政的な措置の仕組みもオープンなものになっていません。バランス・スコアカードは、これらの問題に対し、市民に説明責任を果たすものです。

A 従来の執行評価は、実績評価で、執行部がどの程度施策を実施したか、つまりアウト・プットを問うものであります。これに対し、バランス・スコアカードは市民の側から見て、どの程度成果があがったのか、つまりアウト・カムを問うものであります。

例えば、本年度の道路の舗装工事を、どれだけの予算で、何m実施するという目標に対し、工事施工の結果、何mでしたと言うのがアウト・プットであります。

これに対し、市民の目から見て、多治見市の道路舗装は、本来何mが必要であり、それに対し、本年度は何%を完成させたというのがアウト・カムであります。因みに、今回の基本計画は殆どが、前者のアウト・プットの計画であります。

B 従来の執行評価は、時間軸とサイクルタイムという概念がありません。例えば、行政では、道路改良工事などで用地買収が困難となると、その事業は殆ど永久と思えるほど凍結されます。時のアセスメント法やサンセット法が必要であります。

また、民間企業では当然のように実施されていることですが、いくつかの事業を早く回転させ、起債の金利を軽減し、かつ職員の労働生産性を向上させるという認識が、行政には、非常に乏しいように思えます。

バランス・スコアカードは、これらの問題を、ビジネス・プロセスの視点から解消するものです。

C 従来の執行評価は、定めた目標に対する業績評価で、どちらかと言えば、ネガティブ・チェックによる罰の脅威で行政効率を高めようとするテイラー主義に基づいています。

バランス・スコアカードは、職員の学習と成長の観点から、罰の脅威ではなく、職員の満足度、すなわち自立性と自己実現を動機として、行政効率を高めようとするものであります。

以上のように、バランス・スコアカードは、4つの視点を、バランスさせながら最適な戦略的政策を立案し、行政の執行評価を行うものとして、優れた合理性を持つものでありますが、残念ながら、今回の基本計画の素案には、これらの視点が殆ど見当たりません。

そこで質問は、前述した総合計画の不十分なところを補完しつつ、バランス・スコアカードの4つの視点から、この基本計画を見直していただきたいという主旨で行います。

1. 基本計画はミッションとビジョン、つまり行政的使命と戦略的政策が並列的に混在しています。これらの優先順位を明確にするために、両者を次の段階で区別し、その位置付けを行うべきと考えますが、執行部の考えをお聞かせ下さい。

2. 執行評価が可能な政策目標は、次の段階で立案する予定なのでしょうか。また、その政策目標は実績主義のアウト・プットなのでしょうか。それとも、成果主義のアウト・カムの表現で行うのでしょうか。

3. 計画の体系は、プラン・ドウ・シーの政策マネジメントサイクルのシステムを確立しているのでしょうか。さらに、システムの中で、プログラム評価は可能になっているのでしょうか。

4. 計画の体系は、バランス・スコアカードで示された、市民と実行手順・手続、及び財政と組織成長などの、4つの視点に適合しているのでしょうか。

5. 最初に述べた総合計画の条件設定で、産業フレームと、土地利用・都市計画のフレームや、交通フレームの記述が見当らないのは、何故でしょうか。また、人口フレームが、都市のマスタープランと循環型社会システム構想、高齢者福祉計画、及び最終処分場計画で、それぞれ異なるのは何故でしょうか、お尋ねいたします。

 

 

 

 次に、大きく2つ目の質問で、2,002年の教育改革は大丈夫か、と題して質問を行います。ご承知のように、最近、17歳の少年による衝撃的な事件が続発しています。名古屋の5,000万円の恐喝事件、豊川市の主婦殺人事件、そして九州のバス乗っ取り事件などであります。

 バス乗っ取り事件の後、首相の諮問機関である「教育改革国民会議」は、5月11日に、座長の緊急アピールを発表しました。事前の文案は、事務方から、スクールカウンセラーを全校に配置する、学校は規範意識の教育に真剣に取り組む、家庭ではいけないことを厳しくしかる、などが提案されました。

しかし、委員の方から、善悪をわきまえることを、どう教えるのかが問われているのであって、道徳を呪文のように唱えても意味がない。また、規範意識を育てると言っても、生徒に教師を受け入れる素地がないので効果がない、との指摘があり、文案が採用されなかった経緯があります。これらの事柄は、現在の教育改革は、従来の方法で対処ができないことを物語っています。

 一方、このような現状に対して、現在の教育基本法を改正し、道徳心や愛国心といった視点を盛り込む意見も出されています。しかし、理念法である基本法を改正しても、学校現場での実効性はないという、否定的な見方が支配的であります。また、少年法を改正し、厳罰主義に基づき、年齢制限を引き下げるという意見もありますが、まだ国民的議論さえ発生しておらず、国民的合意を得ることは困難であります。

 いずれにしても、名古屋の5,000万恐喝事件に見られるように、学校側の職務怠慢などが原因であることもありますが、今の教育現場の状況は、単に学校の病理だけではなく、社会的な病理も原因であると考えられます。それは、財団法人・日韓文化交流基金が実施した日本と韓国の中高生に対する比較調査でも明らかになりました。

例えば、「君は将来、社会的活躍ができると思うか」との質問に対して、「できる」と答えたのは、韓国が79%に対して、日本はその半分にも満たない34%でありました。また、「将来、幸せな家庭を作れると思うか」との質問に対し、「作れる」と応えたのは、韓国が86%に対して、日本は半数にも満たない47%でありました。

一方、東京都立高校で、一連の少年事件について作文を書かせたところ、「いい高校、いい大学、いい会社に行くため、といわれて勉強しても、会社が潰れないとは限らず、もし潰れなくとも、会社の部品となって死ぬだけ」との感想が多かったそうであります。

また、中学生の多くは、教師が内申書を盾にして、学校生活の全てを評価することの息苦しさを訴えているとの、報告もあります。

本来、日本の学校教育は、学力と生活の仕方、及び人間関係のあり方の、3つを身に付けさせる目標があったのでありますが、何時の間にか、学力だけしか見ない風潮が支配的になってきました。その結果、日本の大半の中高生は、自分を評価するための手段がペーパーテストだけであるとしか学んでおらず、人間としての評価ができないため、将来に希望が持てません。その上、学校生活の全てを監視されているという、閉塞感に苛まれているようであります。

そこで、最初の質問です。このような状況の中で、教育長は子供から「何のために学校へ行くのか」と訪ねられたら、どのように答えられるのでしょうか。見方を変えると、この質問は、学校教育の動機付けは、何によって行うのかという根幹をなす質問でもあります。

 2番目の質問です。いじめ、不登校、学級崩壊の現状と対策は、どのようなものであるかを、お尋ねいたします。事前にいじめと不登校の実態のデータを頂きましたが、いつも不思議に思うのは、多治見の小中学校でのいじめの数が、全国的な平均よりも極端に少ないことであります。

今回のデータでも、小中学校の在籍人数が11,400人程度でありますが、いじめの数は、平成9年度が10人、平成10年度が13人、平成11年度が16人であり、その比率は、わずかに約0.1%であります。これに対し、最近の和歌山県の国民教育研究所が行ったアンケート調査によれば、小学生の22%、中学生の7%が、いじめを受けた経験があるという結果が得られています。この差は一体何なのでしょう。

これとは反対に、不登校者の数は、多治見が全国平均より多いのであります。1,000人当たりの不登校者数は、小学校の全国平均が3.4人に対し、多治見は4.8から5.7人で、3割から6割も多いのであります。また、中学校の全国平均が23.3人に対し、多治見は20.8から28.8人で、平成9年度は少ないものの、平成10年度と11年度は1割から2割多いのであります。

 これらの事柄から、多治見市では、全国の平均に比べて、いじめが極端に少ないにもかかわらず、不登校者は、やや多いという傾向が見られますが。これは何故でしょうか。

 次に、学級崩壊の現状ですが、多治見の学級崩壊に関する過去のデータはありません。全国連合小学校長会が行った全国調査の結果が、5月18日に公表されました。それによれば、全国の小学校の15%で、学級崩壊が発生していることが明らかになりました。多治見では、どの程度発生しているのでしょうか。お尋ねいたします。

 また、同時に、文部省は学級崩壊の実態調査の結果を公表しました。それによれば、学級崩壊の原因は、教師の指導力不足が多く、従来の指導のあり方を見直すべきだ、と提言しています。多治見の先生の指導力は、大丈夫なのでしょうか。

それぞれの実態と、その対策をお尋ねいたします。

 3つ目の質問です。平成11年度の教育指導方針に対する総括は、どのようなものでしょうか。教育委員会は、平成11年度に「多治見市の教育」という冊子を発行されています。その中の「平成11年度・幼稚園・小中学校・教育指導の方針と重点」で、「確かな力をつけ、活力を生み出す教育」を願い、「子供一人一人が自己充実感を持つ教育を推進する」という方針が謳われています。

 さらに、教育委員会は、過去の結果から、確かな力と活力を身に付けた幼児・児童・生徒の姿が多く認められるようになってきた、と自ら評価しておられます。しかし、一般市民が抱く素朴な疑問として、この確かな力や活力、及び自己充足感などの達成度は、どのような指標で測定し、評価したのでしょうか。お尋ねします。

 4つ目の質問は、2,002年の4月から施行される学習指導要綱の改正に関する質問であります。今回の学習指導要綱の改正は、過去の知識偏重型の詰め込み教育を反省し、ゆとりの中で、自ら学ぶ意欲を評価し、基礎と基本的な内容を重視し、個性を生かす教育の充実を目指しています。

 指導要綱改正の方向に異論を挟む余地はないのでありますが、改正要綱が施行されるまで、余すところ2年を切りました。しかし、多治見市では、具体的な施策や、タイムスケジュールが公表されていません。このため、施策の受け皿を担う地域の指導者の中では、若干の焦りと混乱が生じています。このような事柄を背景として、小さく4点質問をいたします。

@ 今回の改正により、週休2日制となり、教育内容が約3割削減されます。この事が学力を低下させる恐れはないのでしょうか。文部省は、学ぶ意欲や学び方を身に付けるから、大丈夫と言っていますが、算数、国語、理科、社会、英語の基本的な知識は確保されているのでしようか。

A 生きる力を与えるための学習として、体験学習や問題解決学習、及び総合学習を重視すると謳っていますが、経験がない学習を、誰がどのように指導するのでしょうか。また、そのシステムと施策には、どのようなものを考えておられるのでしょうか。

B 学校崩壊で、教師の指導力不足が指摘されていますが、新しい学習指導要綱にある判りやすく、個人に適応した、楽しい学習の指導ができる教師を、この短い期間に、どのような方法で養成して行くのでしょうか。

C 放課後や土日の家庭と地域での教育に対する方針と施策は、どのようなものがあるのでしょうか。

 最後の5つ目の質問です。以上のいくつかの質問に対する方針と施策は、5次総に反映し、かつ整合しているのでしょうか。

以上で、1回目の質問を終わります。

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