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平成12年9月の一般質問(FM PiPi 実況放送)

(持ち時間34分、質問時間24分、7,200字)

 市民クラブの中道です。事前に提出いたしました通告書に基づき、市政の一般質問を行います。質問は、大きく2つの題目について行います。

1つは「西寺市長の5次総をただす」というもので、2つ目は「国友理事に質問する」というものであります。それでは、順次、質問を行います。

多治見市第5次総合計画の基本構想が、この度の9月議会に議案として提出されました。この基本構想は、国の地方自治法に基づき策定されたもので、多治見市の最上位の計画で、今後10年間の市の基本方針になると共に、西寺市長自らが初めて策定されたものとして、市民の間で大変注目されているものです。

議会に提案された基本構想には、参考資料として、構想を具体化した基本計画が添付されています。ここでは、基本構想と基本計画を合わせたものを、単に「5次総」と呼ぶことに致します。

私の5次総に対する一般質問は、今回で5回目であります。今までの質問は、5次総の素案に対し、主に、その策定過程の問題に関する質問でした。今回の質問は最終案に対する質問であります。5次総の最終案における不備や、目的、戦略、表現方法などの問題点について、私の質問を行います。

多治見市は、5次総を策定するために、2年の期間を要していますが、2年前の平成10年8月24日に、法政大学の松下教授が、市の職員を対象として「分権段階における総合計画」と題した講演をされました。幸いにも、私もこの講演を聴講させていただきました。

松下教授は、講演の中で、総合計画のあり方や策定方法、計画内容の構成、計画見直しのタイミングや考え方など、数多くの提案をされています。このため、今回の5次総は、基本的に、これらの提案に基づいて策定されています。

 しかし、松下教授の提案と、今回の5次総を照合しますと、様々な不備が目立ちます。特に、提案された計画内容のモデルと比較しますと、5次総には、@市民自治システム、A計画の戦略的展開、B地域整備計画、C財政と用地計画、D国に対する政策、などの地方自治の柱ともいえる5つの要件が、すっぽりと抜け落ちています。

 まず、1つ目の市民自治システムでありますが、5次総の目指すべき将来像のキャッチフレーズは「市民の鼓動が響く街、多治見」となっています。つまり、市民が行政に参加することを最大の目標に掲げています。

にもかかわらず、5次総には、教授が提案された市民自治システムの計画が盛り込まれておらず、わずかに、基本計画の中で、今後、市民参加制度を整備します、との表現に止まっています。

 次に、教授が提案された中の計画の戦略的展開についての不備を述べます。

5次総の基本計画は、158の項目からなっています。各計画の優先順位は、着手すべき順位が、5年単位に、実施計画と展望計画に識別されていますが、それ以外の優先順位は示されていません。

すなわち、158の計画が多治見市の現状や将来に、どのように展開されるのかが見えてきません。何が最も重要な課題で、その課題を克服するためには、どのような条件整備が必要なのか、その条件整備を、どのような順番に実施するのか、という具体性がありません。つまり、5次総には、教授が提案された、計画の戦略的展開がないのであります。

次に、3番目の不備である地域整備計画について述べます。5次総の策定時期とほぼ同時期に、都市のマスタープランを策定するため、各小学校単位の地区で「まちづくり委員会」が開催されました。

この委員会は、各地区の住民と市の職員とが一緒になって、それぞれの地区が目指す将来像を策定するもので、各地区の計画は、今年の6月に完成しました。 しかし、これらの地区計画は、5次総に全く反映されておらず、それぞれの地区で真剣に検討された地区計画は、財政的な位置付けのないまま、宙に浮いた計画となっています。

次に、教授の4番目の提案である「財政と用地の計画」ですが、全くありません。現在、多治見市の経常収支比率は約9割を占めていることから、5次総の新たな計画に使える財源は、予算の約1割しかありません。したがって、限られた財源を有効に使うためには、どうしても財政計画が必要です。しかし、その財政計画はありません。一体、財政計画のない総合計画なんて、あり得るのでしょうか。

また、同様に、用地計画がありません。5次総を策定するために、3,000人の市民を対象に実施した、アンケートの結果によれば、市民の第1位の要望は、今回も10年前も同じで、渋滞を解消する道路交通網の整備であります。

つまり、市民はこの10年間、道路の改良を切に望んできましたが、遅々として進みませんでした。市の職員によれば、その原因は、市民の協力が得られず、道路用地の買収が進まないからだそうであります。

そうであれば、なおさら市民の要望を満たすために、用地買収のための新たな政策があってしかるべきでありますが、残念ながら、5次総の中に、用地の政策はありません。

次に、5番目の「国に対する政策がない」点について述べます。多治見市は、他の市に比べて財政規模が大変小さく、そのため、他の都市よりも、市民が市役所から受けるサービスが少ないという特徴があります。

その原因は、地場産業の停滞、国や県に対して財政的補助を獲得する戦略的政策がない、地元出身の国会議員がいないという、およそ3つが考えられます。

これらの原因の内、産業と国会議員に対する原因は、市の職員が直接影響を与えることが出来ませんが、国や県に対する働きかけは可能ですし、市の仕事として重要であります。しかし、5次総の中には、国や県に対する政策はありません。

以上、教授が提案された、5つの政策や計画が、何故、5次総にないのかは、重要な問題でありますが、時間に余裕がありませんので、ここでは行いません。

質問は今後の方針に的を絞り、これらの5つの計画不備に対して、今後10年

間、市はどのような施策を進めようとしておられるのかを、お尋ね致します。 

次に、2つ目の質問を行います。5次総には、多治見市の情勢分析がなく、今述べましたように158の項目からなる計画が、ほぼ並列的に列記してあります。

結果として、5次総は総花的で、わかりにくく、多治見市が今抱える課題を不鮮明にしています。

私は、市民の雇用を支える経済の分析や、道路や公園や下水道などの都市基盤の現状、また市民の暮らしに身近な福祉の到達レベル、そして、少子高齢化社会を支える子供の教育の問題点などを、具体的に分析し、評価する必要があると、考えています。

そして、分析した現状を、市民に正確に、より広く知らせ、その上で、多治見市の進むべき方向を明らかにして、市民の合意を得るべき、と考えています。

すなわち、5次総は、多治見市の現状を知らせ、市民の要望を基礎として、今後10年間の進むべき方向と、そのための具体的な方法や手順を示し、市民の合意を得るものでなければなりません。

そのためには、まず市民に分かり易いものである事、そして、それぞれの過程で、徹底的な情報公開に基づく、市民への周知が必要不可欠であります。今回の5次総には、それがありません。このことに対する西寺市長の見解を伺います。

3つ目の質問は、市の目指すべき将来像についてです。

目指すべき将来像については、去る11日の質疑の本会議でも述べましたが、今回は視点を変えて質問します。

5次総のキャッチフレーズは『市民の鼓動が響くまち』で、市は市民が行政に参加することを最大の眼目としています。しかし、先ほど述べた市民アンケートの結果によれば、市政に対する市民の要望の多い順番は、1位が道路網の整備、2位がごみ処理対策の充実、3位が自然環境の保全となっています。

一方、5次総のキャッチフレーズである「市政への市民参加」は、40個の施策の内、市民の要望する第26位であります。つまり、5次総の目指すべき将来像は、多治見市の現状や、市民の要望から大きくかけ離れていることが分かります。

確かに、市民参加は重要な政策であります。しかし、平成10年11月15日付けの「広報、たじみ」でも述べているように、市民参加は、5次総を策定する過程で重要であっても、市民の要望が少なく、市民は市民参加よりも、市が提供する具体的なサービスを望んでいることは明らかであります。

つまり、市民参加は市民の要望というよりも、市職員の希望なのです。

私は、市民の要望と目指す将来像が、基本的に一致すべきであると考えています。また、一致していない場合には、その理由を明らかにすべき、と考えています。しかし、5次総の中には、その説明責任を果たす記述はありません。これらの事柄に対する西寺市長の見解を伺います。

5つ目の質問です。私は6月議会において、5次総の158項目の基本計画を、ミッションとビジョンに区別すべきであり、さらに、10年後の目標とすべき指標をアウトプットからアウトカムにすべきであると提案しました。しかし、議会での市長の答弁は、執行部の力量が足りないため出来ない、というものでありました。

ミッションとか、ビジョン。アウトプットとか、アウトカムという用語は、6月議会で説明いたしましたが、今、FMラジオで私の質問をお聞きの皆様には、恐らく用語の意味が定かではないのではないかと思います。このため、若干の補足説明をいたします。少し難しい話になりますが、ご容赦下さい。

これらの用語は、行政評価のための用語であります。行政評価は政策評価と執行評価の2つからなります。政策評価とは、行政が今後どのような施策を実施すれば良いのかを、市民の立場に立って、客観的に評価することであります。

執行評価とは、市民の合意が得られた施策が、着実に実行されているか否かをチェックし、評価するものであります。

そして、政策評価を行う場合、政策には2つの種類があります。1つはミッションで、市が法律で最低限実施しなければならない事業、例えば、戸籍謄本や住民票の発行、税金の徴収、道路や施設の維持管理、ごみの収集・処理・処分などに対する政策です。ミッションは行政的使命と訳されています。

もう一つはビジョンで、多治見市を陶磁器の街にしようとか、いや住宅都市にしようとか、あるいは循環型社会システムを完成させようとか、他の街とは異なる多治見市独自の政策です。このビジョンは戦略的政策と訳されています。

現在、東京都も、長期計画を策定中でありますが、ミッションはベンチマークスで、ビジョンは50年先のあるべき都市の姿をシナリオ手法で、それぞれ政策を提案しています。

東京都のように、ミッションをベンチマークス、つまり数値目標で表示するということは、例えば、10万人あたりのホームヘルパーの数を、平成何年までに、何人にします、とか、混雑時の自動車平均走行速度を、平成何年までに、毎時何Kmにします、とか、市民1人当たりの公園の面積を、平成何年までに、何uにします、とか言うもので、目標が数値で示されるため、大変わかり易く、またチェックのし易いものです。この表示の仕方をアウトカム、つまり成果主義といいます。

一方、多治見市の5次総は、介護保険の円滑な実施と、保健福祉サービスの充実を図ります、とか、円滑な自動車交通を誘導する基盤整備をします、とか、公共空間での緑化を進め、公園やポケットパークを整備いたします、というもので、目標の到達点が不明で、市の職員の決意を述べたものになっています。

この表示の仕方をアウトプット、つまり実績主義といいます。

市民にとって、5次総はアウトカムが良いのか、それとも、アウトプットが良いのかは、比較するまでもなく明らかであります。何故ならば、アウトカム、つまり成果主義の方が、市民の立場で政策が立案されやすく、指標が市民にわかり易く、しかも政策の執行評価がし易いからであります。

これに対して、アウトプット、つまり実績主義の方は、一生懸命に努力しましたが出来ませんでした、と市の職員に反省されれば、今後の行政に役立つような政策の執行評価が出来ません。

以上の点から、私は5次総の基本計画をミッションとビジョンに区別し、目指すべき目標はアウトプットではなく、アウトカムの表現にすべきだ、と主張したのですが、市長は執行部の力量がないためにできない、と答弁されました。

そこで、再度、西寺市長に伺いますが、では、一体、執行部のどのような力量が足りないのか、また、その力量を満足させるためには、具体的に何をすれば良いのか、さらに、どのようにすれば、目標表現の変更が可能になるのか、をお尋ねいたします。

 

 

 

次に、大きく2つ目の質問で、題目は「国友理事に質問する」であります。

多治見市は、昨年の7月以来、助役と企画部長が兼務となっており、専任の企画部長が不在でありました。企画部長の不在は、今年の7月に、国友理事兼企画部長が、通産省から多治見市に出向されたことで解消しました。

私は基本的に国友理事の出向を歓迎いたします。執行部の説明によれば、この理事という役職は、企画部に留まらず、他の部局の業務にも携わる総合的な役職だそうであります。

ところで、国友理事の出向は、多治見市からの要望で実現したと聞いておりますが、理事は多治見市からの出向要請が、通産省に対して、どのような目的でなされたものであると、認識しておられるのでしょうか、まず最初にお尋ねいたします。

次に、派遣する側の通産省の目的には、どのようなものがあるのでしょうか。また、理事個人の出向に対する目的は、どのようなものでしょうか。さらに、理事は何年間で、どのような業績を、多治見市政に残したいと考えておられるのでしょうか、お尋ねいたします。

3番目の質問は、中央の官庁から見た客観的な、多治見市政の第一印象、及び評価などを、お聞かせ下さい。

4番目の質問です。地場産業つまり陶磁器産業について、お尋ねいたします。

現在、陶磁器は通産省の生活産業局の生活用品課が所管しています。

生活用品課は陶磁器の他に、マッチやコルク、文房具、履物、かばんなどの日用雑貨を所管していますが、同じ日用品である繊維や紙印刷業は、それぞれ独立した繊維課や紙業印刷業課が所管しています。

 

一方、同じ生活産業局の中に、窯業課とファインセラミックス室がありますが、これらは主にガラスや耐火煉瓦、セメントや砂利と酸化アルミニュウムなどを所管し、陶磁器を扱っていません。

すなわち、陶磁器を扱うのは生活用品課のみであり、東濃地方だけでも、年間の販売額が約1800億円である陶磁器産業と、販売額は分かりませんがマッチやコルクなどの商品と同じ扱いであることは、大変疑問であります。

そこで、質問ですが、陶磁器は、何故、窯業課の所管ではないのでしょうか。

また、陶磁器産業の位置付けを上げるためには、どのような方策があるのかを、お尋ねいたします。

 5番目の質問は、今年の4月に建物が完成したにもかかわらず、オープンできないで放置されている、本町の製販一体型施設について、お尋ねいたします。

 製販一体型施設は、地域振興整備公団が多治見市の要請に基づき建設したもので、多治見市と民間で設立した第三セクターの「花柳」が施設の運営を担当し、陶磁器産業の関係者がテナントとして、入居する予定でありました。

しかし、当初、テナント料金が付近の相場よりも高かったこともあって、入居者が少なく、今もって、オープンの目途が立っていません。

つまり、地域振興整備公団も多治見市も、そして、3セクの花柳も、当初の目論見が外れた訳でありますが、このまま施設を放置しておきますと、オープンする前に施設は老朽化し、建設費の金利や維持管理費が嵩むばかりであります。

 

公団といえども基本的には国が運営しているのと同じで、公団の赤字はいずれ国の赤字となってはね返って来る可能性があります。この公団を、通産省の環境立地局、つまり国友理事の出身官庁が監督しています。

そこで、国友理事にお尋ねいたしますが、監督官庁として、このような製販一体型施設の現状を、どのように評価しておられるのでしょうか。

さらに、通産省・環境立地局は、今後、どのような方針で臨まれるのでしょうか、お尋ねいたします。

 以上で、私の質問を終わります。


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