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平成12年12月の一般質問

 市民クラブの中道です。事前に行いました通告に基づき市政一般質問を行います。質問は大きく2つ行います。題目は「愛岐処分場延命策の問題点を解消せよ」と、「9月12日に発生した豪雨災害の抜本的対策を急げ」の2つであります。まず、愛岐処分場の質問から行います。 この問題については、昨日開催された全員協議会の中で、私のこの問題に関する基本的な考え方といくつかの要望を行いました。時間的な制約もあって、昨日は要点しか話せませんでしたが、本日は名古屋市が作成した資料に基づいて具体的な質問を行います。 

去る11月21日の全員協議会で、執行部は本年1月に名古屋市から提案があった「愛岐処分場延命策を了承する」という案を公表されました。延命策の了承は諸般の事情を考慮いたしますと、苦渋の選択であると推察いたしますが、この案は次の2つの事柄を前提に作成されています。1つは、愛岐処分場の現状に問題がないこと、もう1つは、延命策つまり59万dを増量しても安全である、という前提条件であります。私はこれらの前提条件に対し大いに疑問を持っています。何故ならば、少なくとも現時点においては、これらの前提条件が科学的に立証された、とは受け止めていないからであります。そもそも、愛岐処分場は、国が環境影響評価法を制定する前に建設されたために、国内で最大級の管理型処分場にもかかわらず、法律に則った環境アセスメントを実施していません。また、昨日の全員協議会で明らかになりましが、名古屋市は今回の延命策を、県への許可事業にしないで届け出事業とするために、1工区への増量を見送っています。このことは、とりもなおさず名古屋市は、今後も国や県の環境影響評価法や条例に基づいた環境アセスメントを行わないという意思表示であります。
このことから、仮に延命策を了承するにしても、これらの2つの前提条件を科学的に立証すべきであり、もし問題があるのならば、事前に対策を施すべきだと考えるのです。その上で、処分場を延命しても安全であることを、市民にわかりやすく、説明責任を果たすべきである、と考えています。

それでは、疑問のある前提条件について、順次、質問を行います。

去る10月6日、第3回愛岐処分場に係る検討会議が開催されました。この席上で、平成10年度後期から平成11年度前期までの処分場の環境モニタリング結果報告書が配布されました。この環境モニタリングは、名古屋市が水銀疑惑を払拭するために平成9年度から実施しているもので、今回は平成10年10月から平成11年9月までの1年間の結果を、翌年の平成12年3月に取りまとめたものであります。 モニタリングは36地点における延べ160検体について、水質や底質等の検査を実施しています。検査試料の採取は検査の重要度に応じて毎月と3ヶ月及び半年に1回の頻度で行っています。今年3月の結果報告書は、「有害物質等が検出されたが、恐らく自然界に存在する微量なものが原因で、周辺環境に与える影響は軽微であり、環境保全上問題となる状況ではない」と報告しています。モニタリング結果について、私は過去に平成9年の12月議会と平成11年の6月議会の2回質問をしており、その都度、名古屋市の報告書を見させていただきました。報告書を見るのは今回が3度目ですが、結論は何時も同じであります。すなわち、有害物質が検出されたが、自然界に由来する微量なもので、環境保全上問題はない、というものであります。モニタリング結果は処分場の安全性の指標を示す大変重要なものです。
一般に、微量な有害物質を測定する場合、誤差を生じることは良くありますが、長期間にわたって同じ誤差が何度も継続することはあり得ません。このため、私は例え微量でも何度も検出されることは、自然界の誤差と言い切ることは危険であり、処分場の浸出水が何らかの原因で寄与しているのではないか、と考えています。このような疑問を解消するため、環境モニタリングではある程度のデータが蓄積された段階で、個々の有害物質の検出度合いを経時変化グラフで表示し、有害物質の増加や減少の状況を見ながら、その有無を判定するのが普通であります。
しかし、平成9年から、かなりのデータ-が蓄積されているにもかかわらず、今回の報告書には、測定項目に対する経時変化グラフがありません。これでは、度々検出されている微量な有害物質が自然界の誤差なのか、それとも処分場から流出しているのかの判断が出来ません。

そこで、最初の質問は、この経時変化グラフが、何故ないのでしょうか、というものです。
次に、名古屋市は環境モニタリングを競争入札によって民間に委託しています。このため、モニタリングの実施者は年度ごとに変わっていますが、どの業者が測定しても放流水や地下水及び底質などに有害物質が検出されています。つまり、有害物質等は何度測定しても、誰が測定しても検出されています。この結果は自然界の誤差であると説明出来るものではありません。

そこで、第二の質問は、これらの有害物質が検出された原因は何か、というものです。

第三の質問です。3月の報告書は、評価及び環境保全対策の項で、防災調整池2の土壌に対し、環境庁の対策指針に準じた適切な保全対策を講じることと、放流水の溶解性マンガン及び観測井2のニッケルに対し、今後の検査結果によっては必要な対策を検討するように提言しています。報告書完成から、9ヶ月が経ちますが、この提言は実施されたのでしょうか。


それでは次に、もう一つの前提条件である、「59万トンを増量しても安全である」としている点について質問を行います。11月5日に、第4回の検討会議が開催されました。その席上で、延命策を実施した後、ゴミが崩落するか、否かの検討資料が配布されました。ここからの話は少し専門的になりますが、処分場の安全性を確認するために、大変重要でありますので、ご容赦をお願い致します。配布された資料は、ゴミを標高240mまで積み上げたときの斜面安定解析結果と、解析を行うために実施した土質試験結果であります。 延命策によって、2工区でのゴミの高さは当初より約23m高くなりますが、ごみ全体の斜面高は約90mになります。約90mの高さのゴミ斜面は、ゴミの強度によって斜面が崩壊するか否かが決まりますので、ゴミの強度を測定し、斜面のつり合い状態を計算することで、斜面が安定か否かを判定することが出来ます。この手法を安定解析と言いますが、安定解析の精度を決定付けるのは、ゴミの強度と、安定計算のプログラム及び入力条件であります。

 以下、それぞれの問題について質問を行います。4番目の質問です。名古屋市はゴミの強度を三軸試験や一面せん断試験から求めていますが、これらの試験は試料の採取や供試体の作成、及び試験条件によって、結果が大きく異なるにもかかわらず、試験結果には、それらの条件が付記されていません。また、これらの試験を補完するものとして、標準貫入試験のN値がありますが、名古屋市は検討会議でN値が実施できなかったと答弁しています。しかし、実際には、いくつかの深度でN値を実施しており、それらの最小値から経験的に判断いたしますと、今回の安定解析で使用されたゴミの強度で、内部摩擦角が30度というのは、大きすぎるように思われますが、いかがでしょうか。

 5番目の質問は、安定解析に用いた地下水位についてであります。ボーリングの資料では、地下水位を確認した地点と確認していない地点があります。また、安定解析上の地下水位は、1年間を通じて最も高い水位を使用するのが一般的でありますが、ボーリング孔での地下水位観測データがありません。そこで、安定解析の地下水位線はどのようにして仮定されたのでしょうか。また、この地下水位線を使用した場合、安定解析の結果は実際よりも安全側に算定されると考えますが、如何でしょうか。

 6番目の質問です。処分場の延命策は2工区と3工区の2箇所で行われますが、安定解析はどちらの工区の断面かが明記されないまま、1断面で行っています。一般に高さが90mの非常に大きい断面の安定解析を行う場合は、断面の位置は正確に記すものですが、位置の明示がありません。また、埋め立て年度毎に、ゴミの強度を変えたのであれば、埋め立て年度が異なる1工区から3工区の、全ての断面における安定解析を行うのが普通ですが、何故、1断面しかないのでしょうか。さらに、安定解析のプログラムは沢山市販されていますが、プログラムの解析精度は珠玉混合で、まちまちであります。この精度を決定付けるプログラム構成の基本的な考え方が付記されていません。何故でしょうか。また、データを入力する際、解析結果を支配する様々な制約条件が必要ですが、制約条件が付記されていません。何故でしょうか。
以上述べたような安定解析の不備を考慮いたしますと、この度の安定解析の結果は、精度が非常に低いのではないかと考えていますが、如何でしょうか。

7番目の質問です。愛岐処分場の北東約2qの所に華立断層があります。この断層は活断層と判定されており、多治見市の防災計画では、震度6強の地震が発生する可能性があり、その被害は最大で死者が182人、建物の全壊棟数が2207棟と予測されています。一般に安定解析を行う場合、これだけの規模の活断層が処分場に近接して存在すると、この断層の地震動による解析を行うのが普通であります。しかし、名古屋市は活断層が近接しない場合の、簡便な方法で安定解析を行っています。このやり方は危険ではないでしょうか。
以上述べましたように、今回の安定解析は非常に不備が目立つと共に、安全性を確認するためのデータとしては非常に不親切であります。そのことは検討会議の委員からも「今回の結果をどう評価して良いのか判断ができない」と指摘されています。つまり、名古屋市は検討会議の委員に対しても、ましてや多治見市の市民に対しても、延命策の安全性について説明責任を果たそうとしていません。名古屋市は専門家のみならず、多治見市民にも分かる言葉で、説明責任を果たすべきであります。

次はゴミから浸出した地下浸透流について質問します。8番目の質問です。今回のモニタリングで、諏訪町の井戸から硝酸性窒素や大腸菌が検出されましたが、報告書は河川の水質環境基準値の範囲内で問題はないとしています。検討会議でもこの問題が指摘されましたが、名古屋市は処分場の内部斜面に防水シートを設置しているので、問題はないと答弁しています。しかし、防水シートが設置されているのは斜面のごく一部であります。このため、処分場内の浸出水の水位と、諏訪町の井戸の水位に標高差があれば、岩盤の透水係数が10のマイナス4乗であっても、10年や20年後には浸出水が井戸に到達する可能性があります。処分場が稼動し始めてから20年以上が経過しました。どうして、安全だと言い切れるのでしょうか。また、名古屋市が「尾根に囲まれた谷筋が異なるために大丈夫だ」というのは、技術的に稚拙で、あまりにも乱暴な断言であり、地層の層理面や亀裂及び透水係数を無視した答弁であります。安全であることの科学技術的な証明は、まだされていないと考えますが、如何でしょうか。

9番目の質問です。名古屋市は浸出水の地下への漏水については、次のように主張してきました。処分場の地下は、透水係数が10のマイナス4乗の不透水性岩盤からなり、しかも廃棄物貯留ダムを中心として、深さ10から15mのカーテングラウトを施工しているため、浸出水が地下に浸透し地区外に漏洩することはない、と。 しかし、まさに、そのことを確認するために設置された観測孔の2に、毎回、有害物質が検出されています。私は、何度もそのことを指摘していますが、「そんな筈はない」と言うだけで、納得できるだけの明晰な答弁がありません。そこで、私は有限要素法による飽和不飽和・浸透流解析を行い、浸出水が地下を浸透する状況をシュミレーションし、地下水の流れを解明することを提案していますが、未だに実現していません。この解析を実施する以外に、観測孔の2に有害物質が検出されている原因を探す手立てはないと考えますが、いかがでしょうか。

 

 

 

次に、大きく2つ目の質問を行います。質問は、去る9月12日に発生した豪雨災害の抜本的な対策についてであります。私は災害の対策について3つの段階を考えています。まず、災害に強い街を造ること。次に、費用対効果の面で災害に強く出来なかった部分については、そのことを住民に周知徹底し、行政と住民が予め準備をして置くこと。そして、災害が発生した場合を想定し、行政が危機管理体制を十分に準備しておく、の3段階であります。この内、今回は災害に強い街を造るための質問と、費用対効果の面で、行政がどこまで災害に強い街を造ることが出来るのか、という質問を行います。基本的には、水害に対する都市の基盤整備の質問ですが、質問は外水、つまり河川対策と、内水、つまり住宅側に溜まった水の対策、及びポンプの能力について質問を行います。

まず、外水対策で、土岐川について質問いたします。平成9年度に国の河川法が改正され、土岐川は河川整備基本方針と河川整備計画を策定しなければなりませんが、まだ策定されていません。河川整備基本方針は確率論的に何年かに1回発生する洪水を想定し、どのように川を整備して行くのかを決めるものです。ヨーロッパでは100年から1000年に1回の割合で発生する洪水に対し安全であるように、既に整備済みであります。一方、日本では、インフラの整備が遅れており、例えば、土岐川は現在10年に1回発生する洪水に対してしか、整備されていません。この度の土岐市を中心に行われる復緊事業が完成する平成14年に、やっと20年に1回の洪水に耐えられるようになります。河川整備基本方針は建設省が策定するのに対して、もう一つの河川整備計画は、建設省と地方の首長及び地域住民が一緒になって策定するものです。整備計画は基本方針に沿って、住民自らの地区の河川をどのように整備して行くのかを決定するものです。例えば、洪水に対し安全を確保するために、川幅を広げるのか、堤防を嵩上げするのか、それとも河床を掘削して低くするのか、また河川敷を親水公園として整備するのか否か、などです。この整備計画は、計画の方向性によって橋を広げるのか、それとも高くするのか、また道路はそのままで良いのかどうか、さらに住宅地が減少するのか否か、日照権が侵害されるのか否か、などの都市計画にも関係して来るものが多く、市民にとって非常に重要な事柄を含んでいます。このように、河川整備基本方針と河川整備計画は、市民の防災活動にとって非常に重要なことでありますが、法律が改正されて3年が経過した現在においても、まだ策定されていません。何時、策定されるのでしょうか。

2つ目の質問です。建設省は土岐川を100年に1回の割合で発生する洪水に耐えられるように整備する方針でありますが、当面、30年に1回の洪水に対処しようとしています。先ほど述べました復緊事業、つまり土岐川災害復旧等関連緊急事業は、土岐市を中心に本年度から平成13年度にかけて行われます。この事業は総額が約104億円で、多治見市では約20数億円をかけて、河床の掘削などを行います。この事業の完成により、多治見市内の土岐川は20年に1回の割合で発生する洪水に耐えられるようになります。しかし、建設省が当面の目標とする30年に1回の洪水に耐えられるようになるは、一体何時なのでしょうか。

3つ目の質問です。県が管理している笠原川や大原川、及び生田川は、現在、何年確率の降雨強度に耐えられるように整備されているのでしょうか。

4つ目は内水に関する質問です。今回、池田町や平和町で発生した水害は、住宅などから排水される汚水と、降雨による雨水を一緒に処理する合流方式であった事が、処理場排水能力の不足となる大きな要因となりました。住宅などから排水される汚水の量は、人口に大幅な変動がない限りあまり変化がありません。これに対し、雨水は降雨量によって大きく左右されます。つまり、合流方式の処理場は、基本的に異なる2種類の水が混入するため、大量の水を浄化しなければならず、しかも、雨水は汚水ほど厳密に浄化する必要がないため無駄が多いのです。この理由により、現在、下水道の整備は殆どの市町村が分流方式を採用しています。多治見市が合流方式を採用したのは、下水道と内水の所管が建設省の下水道課であったためですが、今後、合流方式を分流方式に変更する予定はないのでしょうか、お尋ねいたします。

5つ目の質問です。農地や市街地に溜まった内水は、河川に自然流下させるのが原則ですが、河川の水位が内水位よりも高くなった場合には、樋門を閉鎖し、内水の水位を上昇させないために、ポンプで強制的に排水する必要があります。この時、ポンプの排水能力をどのようにして決めるのかについては、建設省が技術基準で、当該地区が市街地の場合は30年に1回の確率で発生する内水に対処できる能力を、当該地区がその他の土地利用の場合は10年に1回の内水に対処できる能力を備えるように示しています。そこで質問です。多治見市内で建設省の技術基準を満足していない施設は、どこにどれだけあるのでしょうか、というものです。

6つ目の質問です。ポンプの能力を決めるとき、内水の全ての水を排水する訳ではありません。全てを排水するためには強力なポンプが必要になり、10年か30年に1回来るか来ないか定かではない内水に対して、莫大な費用をかけることが得策であるか、どうかが判断できないためであります。一方、水害は床上浸水と床下浸水では被害額が大幅に異なります。そこで、ポンプの能力を算定する時には、費用対効果の観点から、床上浸水しないように費用便益計算によって、ポンプの能力を算定します。言い方を変えますと、ポンプの能力は床下浸水を容認した状態で決定されます。実際に平和町では、水田よりも2.3m高く、愛岐道路よりも35cm高い位置に、内水の湛水許容水位が設定されています。建設省はこのことを容認しています。しかし、昨日の池田公民館で開催された第3回目の水害の説明会でも、住民から指摘がありましたように、例え、35cmの水深でも水死する可能性があることを考慮いたしますと、多治見市はこのようなことを容認するのでしょうか、お尋ねいたします。

7つ目の質問です。もし、床下浸水を容認するのであれば、床下浸水する可能性のある地域の住民が周知する必要があります。また、土岐川が現在目標としている降雨確率強度で整備されていないのであれば、現在の整備段階における浸水状況と、目標とする降雨確率強度による浸水状況を、ハザードマップとして地域住民に知らせる必要があります。これらのハザードマップの周知は、地域住民の権利であると共に、生命や財産の危険な状態を知りえた行政の責務であります。そこで質問は、10分の1と、30分の1の確率降雨強度に対するハザードマップを作成し、いつ住民に配布されるのでしょうか、というものです。

8つ目の質問です。平和町の内水災害の要因としては、笠原川右岸の雨水が平和町に流入したことが考えられます。この地区外からの雨水流入を遮断しなければ、平和町の内水の抜本的対策は困難です。地区外からの流入水を解決するのは、いつ頃になるのでしょうか、お尋ねいたします。

次はポンプの能力に関する質問で、9番目になります。池田下水処理場のポンプは雨水用と汚水用の2種類のポンプからなります。これらのポンプの能力は費用対効果の費用便益計算、つまりB/Cによって算定されているのでしょうか。また、B/Cを計算した時、対象とする土地の利用状態を、どのように設定したのでしょうか。この質問の主旨は、土地利用が市街地とその他の場合では、設定する降雨強度が異なり、必要とする排水能力も著しく異なるためであります。

最後の10番目の質問です。平和町の脇之島排水機場のポンプ能力を算定した時期は昭和50年であります。ポンプの能力は50年の確率降雨強度で、B/Cにより算定していますが、今から25年も前の計算であります。B/Cの算定基礎となる住宅は、当時よりかなり増加し、床上浸水による被害額も相当増大していると考えます。そこで、B/Cの計算を見直し、ポンプの能力を見直す予定はあるのか、それとも無いのかを、お尋ね致します。

以上で、私の1回目の質問を終わります。

 

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