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平成16年8月17日

合併問題調査特別委員会

委員長 森 寿夫 殿

委員 中道育夫

 明日開催予定の特別委員会・協議会は、18、19日に東京出張がありますので欠席をさせていただきます。明日の会議は、西寺会長が8月24日の合併協議会で「笠原町議員の身分を決定する」と言明されたことから、多治見市議会の意見集約をするものと推察しています。そこで、本件に関し私の意見表明をする機会がありませんので、文書での発言を行いたいと思います。どうか、委員長並びに委員各位の格別のご高配を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。

 さて、私の意見を結論から申し上げますと、次の通りです。私は当事者である笠原町議会が「在任特例」を機関決定された以上、合併を確実に実現することを第一義的に考えた場合、当多治見市議会も報酬等に条件を付して「在任特例」を採用すべきであると考えています。私が所属する市民クラブでも、7月29日の会派会議で概ね同様な方向が確認されました。

しかし現在、笠原町のなかで「定数特例」を主張される町民も沢山おられるようで、本件に関する笠原町総意としての合意形成がまだ確立されていません。そのような状況のなかで多治見市議会が機関決定を行なうのは、合併後の住民の融和を考慮すると時期尚早ではないか、少なくとも笠原町の総意を受けた後、それを尊重する形で機関決定を行なうのが良いのではないか、と考えております。

 以下、詳細を@合併の必要性、A在任特例の必要性と条件、B機関決定の時期に分けて、それぞれ述べます。

1.笠原町との合併の必要性について

@ 外的条件

 8月5日、政府が主催する「市町村合併を共に考える全国リレーシンポジューム」が東京で開催されました。香山充弘・総務省事務次官は基調講演で次のように述べています。「いま日本は閉塞状態に陥っており、それを打開する唯一の方策は、霞が関の主導ではなく、地方行政の多様な取り組みである。そこで、いま何故合併かというと、合併して地方分権の受け皿を作っていただき、地方行政に多様な取り組みをしていただきたいからである。地域の主権は間違いなく市町村にあり、市町村のパワーアップを図るのが合併の目的である。」

 一方、政府の地方制度調査会は第27次の答申で、地方自治体を道州制と基礎的自治体及び地域自治組織の3段階の方向を示し、それに基づき新しい合併特例法では地域自治組織に相当する地域自治区制度が創設されています。今後、道州制や基礎的自治体がどのような規模で収斂するのか予断を許しませんが、現制度との整合性を考慮すると、地方分権の受け皿となる基礎的自治体の規模は、人口が30万人以上の中核都市が適しているのではないかと考えています。

 多治見市が中核都市を創ろうとすると、可児市を含む4市3町の人口33万人の合併が必要ですが、この合併は平成14年の1月に可児市長等が拒否しました。また次の策で、3市1町で人口22万人の特例市を創ろうとした東濃西部の合併は、投票方式の意向調査によって住民に否決されました。今回また笠原町との合併ができないとなれば、将来の中核都市の形成のみならず、多治見市は未来永劫合併ができないという汚点を子孫に残してしまいます。

 私は笠原町との合併を今回何としても実現させて、多治見市のパワーアップを図り、将来地方分権の受け皿となる中核都市の形成に繋げたいと願うものです。

A 内的条件

 笠原町との合併によって受けられる国と県からの財政的支援は、合併特例債が194億円、県の合併推進事業が92億円、その他の補助金等が21億円で、合計約307億円にも上ります。その他に普通交付税の算定特例で年間約9億円が10年間保障され、その後5年間で段階的に削減され、合併しない場合よりも15年間で100億円以上の合併効果があります。

 いま多治見市の財政は、地場産業の疲弊化、少子高齢化による生産年齢人口の減少によって自主財源が極端に落ち込み、平成17年度の予算編成が困難となって、職員の給与や特別職の報酬の削減が避けられない状況です。しかも、その財政的苦境は回復の方策すら見当たりません。そのような多治見市財政の現状にとって、合併による国と県の財政的支援は大変大きなメリットであり、何よりも遅れている社会基盤を整備するために、是非とも必要な財政的支援であると考えます。

2.在任特例の必要性と条件について

 合併を実現するための手続きは、合併協議で合意した後、2人の首長が合併協定項目に調印し、多治見市議会と笠原町議会の両方で議決する必要があります。

一般に議員の身分は地方自治法の精神に則れば「定数特例」の適用が妥当であろうと考えます。しかし8月13日の合併協議会の席上で、嶋内九一町議会議長は笠原町議会が「在任特例」を機関決定したと報告されました。そして別の席で、「在任特例」に賛成した議員の数を聞いたところ、実質上13名のほぼ全員が賛成であるとのことでした。

このため、現在の状況で合併を実現しようとすると、笠原町議会が「在任特例」を決定した以上、多治見市議会は笠原町議会の決定を追認せざるを得ない状況が生まれました。

ただし「在任特例」は、消滅して多治見市に編入される笠原町の意見を代弁する制度であるため、地域審議会との併用は馴染みません。また、最近の合併事例で「定数特例」の適用が多用されている状況からみて、合併によるコスト増は町民と市民の理解が得られません。

したがって「在任特例」を適用する場合には、議員報酬の据え置きと地域審議会設置を見合わせることが条件となります。前述しましたが、新しい合併特例法は地域自治区制度を認めています。ですから地域審議会ではなく、笠原町の意見を代弁するのみならず都市内分権のモデルとして「地域自治区制度を活用する方策」などを、今後検討したいと考えています。

 以上が私の考えている法的な手続き論ですが、心情的には編入合併によって笠原町という自治体が消滅し定数特例による3名の議員が、相談すべき同様な境遇の他の自治体議員もいない状況下で、24名の多治見市議会のなかに参加する心境は、その責務の大きさを考える時、察するに余りあるものと考えています。

3.機関決定の時期について

 議員の身分の議題は、7月16日の第2回合併協議会で資料の提示と説明があり、その後の第3回と第4回合併協議会で議論されました。前述したように西寺会長は次回の8月24日に開催される第5回合併協議会で結論を出すと言明されました。つまり合併協議会は1ヵ月強の期間と3回の議論で、この問題に決着を付けようとしています。この間、多治見市議会は7月22日の特別委員会と8月10日の全員協議会で各1回づつ、この問題に対して議論したのみであり、特別委員会としては今回が2回目です。合併の成否を左右する重要な議題としては、議論が不足しているとの謗りは免れないものと考えられます。

 また、何よりも笠原町議会が「在任特例」を決定したと主張されても、合併協議会の笠原町の3号委員、つまり6名の市民委員のうち3名が「定数特例」を主張し、市民委員の意見が真っ向対立していることから、「在任特例」は笠原町民の理解が得られていない、つまり笠原町の総意としての合意形成がまだ確立されていないのではないか、と推察しています。

 今回の合併は、笠原町長が1800余名の署名を添えて合併協議会の設置を要望されたのが発端です。そして署名活動に携わった町民の話によれば、署名活動を行なうなかで多治見市との合併に反対された町民はたった1名のみで、この合併の要望は笠原町のほぼ総意だそうです。ならば合併実現の成否がかかったこの問題で、町長を先頭に笠原町の総意となる合意形成を図っていただきたい。また町議会は町民の理解が得られるように自ら決定した「在任特例」の説明責任を果たしていただきたい。私は笠原町の総意を受けた後、もしくは合併協議会での笠原町3号委員の意思表明を見極めた後、総意を最大限尊重する形で審議して私の1票を投じ、自らの多治見市議会議員としての責務を果たしたいと考えています。

 そのためには、8月24日に第5回合併協議会で議員の身分を決定するのは、いかにも時期尚早であると考えています。合併協議会事務局のスケジュールによれば、12月議会で合併の議決を得ようとしており、両者の首長の調印作業を考慮すると余り時間的な余裕がないことを承知しておりますが、急いで合併が破綻すれば元も子もありません。また急いだために合併協議が上滑りとなって見切り発車のような合併、少なくとも笠原町民の理解が得られていない合併は、昭和の大合併時の分町事例を出すまでもなく、新市融和の障害となります。

 笠原町には、期限を限定して町としての合意形成を図っていただき、総意を形成していただくよう要望し、その後に多治見市議会の機関決定を行なうよう、私は切に要望いたします。

以上

 

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