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多治見市民病院・県立病院の一体化構想

(平成9年9月議会・一般質問より抜粋)

次に、大きく市民病院と県立病院の一体化構想について質問を行います。

ご承知のように、市民病院は鶴賀院長を初めとする職員のご努力により、本会議でも説明がありましたように、基準外の繰入金を含めてではありますが、2年連続して黒字の経営状態となりました。

黒字になった大きな原因は、平成6年度にコンサルタントが行った病院の経営診断に基づき、救急の強化、消化器と循環器の強化、検診の拡充等の施策、及び人件費等の経費削減に、職員が一丸となって努力された賜物であろうと推察しております。

しかし、経営診断の報告書は、これらの施策を実施した後、さらに病院の健全な経営を維持向上させるためには、拡大均衡を図ることが最も妥当であり、そのためには病院の移転改築が必要であると、結論付けています。

現在、市民病院はコンサルタントの提言をほとんど実施した結果、経営は黒字になりましたが、2次医療を担当している市民病院を今後さらに発展させるための方針は、今のところ移転改築しかありません。しかしながら、財政非常緊急事態を宣言している当市には、移転改築するための費用を捻出する有余はありません。

一方、市民病院を考える市民委員会は、平成10年の4月に、「多治見市民病院のあるべき姿に関する第2次報告書」を、市長に答申致しました。報告書は「他医療機関と連携し、保健・福祉・医療の共働化のシステムを確立し、総合医療センターを構築する」ことを提唱しつつ、5つの具体的な提言を行っています。

これらの提言に異論を挟む余地はありません。しかし、昨日の答弁にもありましたように、多治見市に療養型病床群は、現在、3ヶ所に49床しかありません。また、提言の中で市民病院に必要な施設として上げられている療養型病床群や、ホスピス病棟などの通称・老人病院の設置は、医師を名古屋市立大学などの派遣医師に依存している現状では、困難なのであります。

即ち、多治見市は、介護保険の実施を控えて、通称・老人病院を設置する必要があるにもかかわらず、医師が調達出来そうもありません。また、市民病院は健全な経営のために移転改築する必要がありますが、お金がありません。つまり、多治見市は、総合医療センター構想を実現するための、医師もお金もないのであります。したがって、私は、市民病院が果たすべき役割を再構築すべき時期に来ているのではないかと考えています。そのような観点から幾つかの質問を行います。

まず、市民病院は、経営診断により黒字になりましたが、医療サービス機関としての客観的な評価をまだ受けていません。新聞報道によれば、岐阜県の2つの民間病院が、財団法人「日本医療機能評価機構」から、全国レベルの水準を満たしていることを示す認定証を受けたそうであります。今までに、全国で238の病院が認定を受けていますが、岐阜県では初めてだそうであります。認定を受けるためには、約370項目の審査を行い、そのための費用は約180万円だそうであります。

私は市民病院の役割を再構築するこの時期に、市民病院の医療機関としての現状の客観的な姿を把握して、方針を立案する必要があると考えています。

そこで、最初の質問でありますが、市民病院は日本医療評価機構の評価を受ける予定は無いのでしょうか、というものであります。

次に、市民委員会が提案した5つの具体的な提言は、どうも着手されている様子が見られないのでありますが、現在の進捗状況と今後のタイムスケジュールはどのようになっているのかを、お尋ね致します。

次に、現在、コンサルタントによって行われている病院建設マスタープランは、市民委員会の5つの提言に則して策定されているのでしょうか。また、提言が述べている移転改築のための新規組織は、早急な設置が望まれていますが、何時頃設置する予定なのかを、お尋ね致します。

次に、私は、市民委員会が提唱する「総合医療センター」を構築するためには、種々の条件を考慮して、市民病院と県立病院を一体化させる方法が最も良いと考えています。質問は、この2つの病院の一体化構想に対する執行部の見解はどのようか、というものであります。執行部には、一体化構想を説明した冊子を事前にお渡ししていますので、ここで詳細に述べませんが、その概要は次の通りであります。

事前に、執行部と議員の皆様に、県下公立10病院の平成10年度比較という図表を配布させて頂きました。この図表は岐阜県が公表した資料に、週間東洋経済の地域経済総覧‘99のデータを付加したものであります。

諸般の事情により、資料を議場で配布出来なかったのでありますが、図表の上段の表の内、県の資料は左の病床利用率までで、右側の人口1万人あたりの病床数と医師数は東洋経済のものであります。県の資料の一部は、先日の市民病院運営特別委員会で公表されたものと、基本的に同じものであります。

下段の2つのグラフは、上段の表を2つに分けて、分かりやすくグラフ化したものであります。この図表を詳しく説明する時間はありませんが、結論だけ述べますと次の通りであります。

@ 医師1人当りの診療収入は、県下公立の10病院の中で、多治見市民病院が最も少なく、県立多治見病院を始めとする3つの県立病院が、その次に少ない。つまり、これら4つの病院の経営状態が良くないことを示しています。

A 多治見市民病院は外来収入が多く、入院収入が少ない。これに対し、県立多治見病院は外来収入が少なく、入院収入が多い。この現象は軽い病気の患者が市民病院へ、重い病気の患者は県立病院へ通院しているためと考えられます。2つの病院に軽い患者も重い患者も通院しているということは、市民病院の2次病院と、県立病院の3次病院の機能分担が、行われていないことを示しています。

即ち、2つの病院は、お互いに足りない部分を補完して相乗効果を発揮するよりも、経営的に、結果として、お互いに患者の奪い合いとなって、競合し、足の引っ張り会いのような状態になっています。

このことを極端な例え話にしますと、県立病院は非常に高価な設備を整えて人件費の高い技術者を揃えているが、軽い病気の患者に忙殺されて赤字を出している。市民病院はその反対のパターンで赤字を出している構図であります。

したがって、2次病院の市民病院と、3次病院の県立病院が完全に機能分担を行えるようにすれば、2つの病院は競合することなく、お互いに相乗効果を発揮することが可能になるものと予想されます。

B 医師1人当りの診療収入が多い病院は、院外処方率が低く、病床利用率が高い病院であります。この内、院外処方率は、国の方針により、いずれ全ての病院で上昇します。したがって、診療収入を多くするためには、病床利用率を上昇させるしかありませんが、多治見の2つの病院は、いずれも病床利用率が最下位グループと低いのであります。

病床利用率が低い原因は、人口1万人当りの病床数が多いからではありません。大垣市は、多治見市よりも病床数が多いのでありますが、病床利用率が高く、かつ診療収入が多いのであります。因みに、人口1人当りの医師の数でも、大垣市は多治見市より多いのであります。つまり、多治見市は、経営状態の良い大垣市よりも、医者の数もベッドの数も少ないのであります。

C 結論として、多治見市の医療は、市民病院と県立病院が完全な機能分担を行えば、大垣市の病床数と医師数の規模まで拡大均衡が可能であり、病院の健全な経営が可能であると考えられます。よって、市民病院と県立病院の一体化が望ましいと考えています。

D 一体化が望まれるもう1つの理由は、先ほど述べましたように、現在の医師を大学からの派遣医師に依存するシステムでは、市民委員会が提言する療養型病床群とホスピス病棟の設置が難しいことが上げられます。何故ならば、大学側にとって、これらの通称・老人病院と呼ばれる病院に医師を派遣するメリットがないからであります。

したがって、多治見市に、これらの老人病院を設置する必要があるのならば、2つの病院を一体化させて規模を大きくし、巨大病院の中に、その機能を吸収する以外に方法は無いものと考えられます。

E 一体化のさらなる理由は、そもそも病床数250床の市民病院が、病床数715の県立病院と連携して、多治見市の総合医療センターを構築することは、規模の大小の関係から見て、無理があるように思われます。

県立病院は依然として、東濃第5圏域の3次病院としての機能を果たす必要があります。しかし、土岐市や中津川市に公立の病院が出来た現在において、その役割は相対的に低下しているものと考えられます。したがって、県立病院の経営改善のためにも、一体化が望ましいと考えられます。

そこで、再度、以上のような市民病院と県立病院の一体化構想に対する執行部の見解をお尋ね致します。


 
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