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平成16年1月12日

瑞浪市議会議員 A様

瑞浪市「合併問題研究会」の資料に対する見解

多治見市議会議員 中道育夫

 

年末にお預かりしました「合併問題研究会(代表・加賀達士氏 以下、単に研究会と呼ぶ)」の資料を拝読いたしました。この資料は「区長、町内会長各位」として地元住民との勉強会に役立てて欲しいとの主旨を伝えていますが、3市1町の合併に関しての内容に誤解が散見されますので、正確な情報をお伝えすると共に、ご要望のありました私見をまとめて見ました。

資料は「不安な事」として別資料を添付しながら、次のA,B,Cの3点を指摘しています。

以下、それぞれについて順に述べます。

A 国の借金が多すぎ、合併後に大幅な交付税、補助金のカットが行われる可能性がある。(参考資料@として朝日新聞の「私の視点」から川瀬憲子氏と片山善博氏の論文を添付)

(見解) Aの表現は正確ではありません。「国の借金が大きすぎて、近い将来合併しても合併しなくても交付税と補助金のカットが行われる可能性がある。ただし、合併後の10年間は現状の交付税が保障され、その後5年をかけて徐々に削減される」、というのが正しい表現だと考えます。

そして、「では、どうするのか!」というスタンスに立って、私は「合併すべきだ」と考えます。

 

次に川瀬憲子氏の論文についてふれます。川瀬氏の主張は次のようです。静岡市と清水市の合併のように、合併特例債をあてにしたバーチャル水族館やオペラハウス及び新庁舎に500億円を掛けるような合併は、かえって自治体の財政危機を深刻化し、そのツケは市民に転嫁されるだろう。結論として、表題に示されているように、「市町村合併での交付税依存は自治体の財政危機を招く」と主張しています。

 

ここで申し上げますが、「研究会」は3市1町の合併を正確に把握しておられないようです。3市1町の合併協議会は、まず大型公共事業やオペラハウスのような合併記念事業を計画していません。新規の事業は、合併特例債の期限が切れる10年以内に新庁舎を建設することのみです。その理由は、現在の3市1町の全ての庁舎が昭和40年代に旧の耐震設計で建設されたものであり、現行の耐震設計よりも強度が小さく東海地震や東南海地震には耐えらない建物だからです。また、現庁舎は22万人の庁舎としては、どれも部屋や駐車場の面積が狭く、電子自治体を構築する建物としては適していないなどが挙げられます。したがって、いずれ立て直さなければならない市民のための庁舎であるならば、3市1町の市民がアクセスし易く広い敷地に、合併特例債を使って建築した方が得策である、との判断によるものです。

 

新市建設計画の事業全体に対して、合併特例債586億円のほぼ上限を使う予定ですが、新庁舎建設以外の事業としては、3市1町の総合計画を実現するために使用することが基本的な合意となっています。これは各市町の首長が過去に提案し、それぞれの議会が既に議決した事業、つまり市民が実現を願っている事業を、合併特例債に依拠して実現しようというものです。豪華で華美かつ無駄な事業を計画しているのではありません。

 

それでは、なぜ合併特例債を使うのでしょうか。それは極めて有利な地方債だからです。例えば、市民生活に必要不可欠な道路や下水道を建設する場合、合併せずに現行の地方債を利用する場合は、各自治体がそれぞれ71%と55%を負担しなければなりませんが、合併を実現し合併特例債を利用した場合は、自治体の負担がいずれも33.5%の負担で済みます。同様に、学校を建設すると仮定した場合でも、合併しないときは自治体の負担が大きく、合併して合併特例債を利用した場合は、自治体の負担が少なくて済みます。

 

このように申し上げますと、しかし合併特例債の約30%は借金ではないか、いま以上に借金を重ねて返せるのか、という意見がでてきます。これに対しては次のように考えます。

1つは「借金をするな」という主張ですが、そもそも地方自治体は基本的に無借金経営ができないような仕組みになっています。それは単年度現金主義と呼ばれる制度で、自治体は単年度で余ったお金を貯金することが原則としてできません。財政調整基金といって努力し節約して浮かしたお金を半分だけ積み立てるという制度はありますが、自治体全体の予算額からすれば小額です。したがって、道路や下水道及び学校などの社会資本を整備する際には、何らかの地方債を起債、つまり借金をしなければなりません。このような制度の背景には、我々の世代だけでなく次の世代も社会資本整備の恩恵に預かるのであれば、次世代の方にも整備費用を負担して頂きたい、という考え方が含まれています。

いずれにしても、これらの借金は合併するしないにかかわらず必要です。地方債には種々ありますが、合併特例債がもっとも有利な借金であることは、先ほど述べたとおりです。

もう1つは「借金を返せるのか」という疑問です。合併協議会の発表によれば、合併特例債の借金は約160億円と見積もられています。これに対し財政計画では、現在3市1町合算の財政調整基金(前述の積立金)の合計が約30億円あるので、合併特例債の有効期間である合併後の10年間に、残りの約130億円を積み立てることにしました。なお、これらの合併協議会の財政計画は公表されています。

次に、川瀬氏が懸念している「市町村合併での交付税依存は自治体の財政危機を招く」について述べます。3市1町の合併の場合は、合併特例債に依存はしますが交付税に依存する考えはありません。合併しない場合、近い将来交付税は確実に減額されますが、合併すると10年間は交付税が減額されません。そのためこの有利な制度を利用する訳ですが、だからと言って交付税に依存した自治体経営を考えているわけではありません。

国が設定した平成の大合併のスキーム(枠組み)は、次のようなものであると、私は理解しています。国は、右肩上がりの経済の中で行ってきた国民にあまねくしかも平等な行政サービスを提供することが出来なくなりました。できなくなった背景には、西欧へのキャッチアップと日本の国際化、長い景気の低迷、そして少子高齢化や情報化社会の到来などがあります。

そこで、国は様々な政策を打ち出し現状を乗り切ろうと、次のようなメッセージを地方に送っていると、私は受け止めています。「地方自治体は、自己決定・自己責任の原則に則って自ら望むまちをつくり、中央から自立して下さい。自立するためには、合併を行って一定規模以上の自治体になる必要があるでしょうし、地方分権による権限移譲や三位一体による税源移譲も必要でしょう。また自立するために合併する際には臨時的な経費も必要でしょうから、10年間に限り合併特例債を準備しました。そして、国のこの提案を受け入れるか否かは、当事者である住民が決めて下さい。国は強要いたしません。ただし、自立できなくなった自治体は近隣の自治体又は県の管理下に入っていただくことになり、その場合には住民の自治がなくなることをご承知下さい。」

 

平成の大合併の受け止め方は様々ありますが、私の理解は以上のようなものです。

そして私は、景気が低迷し続ける中で、確実に少子高齢化が進み、情報化社会が到来する、そのために国が地方を元気付けるラストチャンスを与えたと、前向きに受け止めています。

ですから、国が与えた10年間のラストチャンスを生かして生活基盤や産業基盤、さらに都市基盤までも整備し、来るべき厳冬の次代に備え足腰の強い自治体を構築したい。そして少なくとも、交付税に依存しない自立した自治体経営を実行しなければならないと考えています。

 次に、片山善博氏の「合併特例債、交付税の先食いはやめよ」について見解を述べます。

片山氏の主張は、基本的に川瀬氏の主張と同じであります。したがって、今まで述べてきた私の見解で十分答えたと考えますが、1つだけ気になる指摘がありますので言及します。

片山氏は、「合併特例債の発行額が全国で何十兆円になるのか私には分からないが、数十兆円にものぼる無駄遣いを見過ごす余裕はこの国にはない」と指摘しています。

 国は約3,200もある自治体の数を、合併によって約1,000の自治体にしたいと考えています。しかし2,003年の6月時点で見ると、法定と任意を問わず、何らかの形で合併協議会に参加している自治体の数は約1,900でした。そして、これらの自治体がすべて合併特例債を使うと仮定した場合の合併特例債の金額は、約12兆円と試算されています。

 現在、国と地方は合わせて約693兆円の借金を抱えており、その年間の利息は約9兆円であります。一方、合併特例債の12兆円は10年間の金額でありますので、年間に換算いたしますと約1.2兆円です。これは国と地方が現在抱えている借金の利息と比較すると約8分の1ですが、この費用を先行投資することで地方が自立し、将来国と地方の負担を軽減したい。国が合併を推奨している背景にはこのような目論見があると、私は考えています。

 そこで先ほども述べましたが、合併後の自治体の最重要課題は、合併特例債が有効な10年間のうちに、いかに足腰の強い自立できる自治体を構築するかにあります。そして、それは偏に各自治体の自覚と行政的な力量に左右されることになります。反面、従来のように国に依存した自治体経営を継続すれば、片山氏や川瀬氏の指摘のようになることは、火を見るより明らかです。

B 瑞浪市内でも中心部への集中が見られ、周辺部の過疎対策が発見できないまま3市1町の合併をすれば、多治見一極集中になる可能性が大きいと思われる。(参考資料として瑞浪市教育委員会の「小学校児童数の変化」を添付)

(見解) 大変難しい問題であります。この問題の解決策が発見できれば、日本中の過疎問題が解消される筈です。高度成長経済と共に進行し社会問題となってきた過疎化ですが、安定成長しか望めない現在、私はもはや従来の発想の延長上からは解決策を発見することはできないと考えています。経済状態の変化に伴う社会の発展や変化と伴に進行した過疎問題ですが、これからの時代はむしろ多様化してきている人間の価値観の問題に置き換え取り組んで行くことが、より現実的な解決策に繋がるのではないか、と考え始めています。

以下、私が考察するところを述べます。

 過疎の反対語は過密です。過疎がいやなら、それでは過密が良いのでしょうか。過密とは何が過密なのでしょうか。人が多ければ良いのでしょうか。人が多くて良いのであれば、新宿歌舞伎町のような「まち」が良いのでしょうか。歌舞伎町は昼間の顔と夜間の顔が異なりますが、どちらの顔の街を望まれるのでしょうか。極論を承知で敢えて申し上げますが、「研究会」は瑞浪市のいたるところに歓楽街を造れと主張されているのでしょうか。

そうではないはずです。

 歌舞伎町は、1,000万人以上の人口をもつ東京圏の中で歓楽街に特化した街であり、東京以外の場所では存立し得ません。仮に、瑞浪市に歓楽街ならずとも、同等の賑わいのある中心市街地を造れと主張されたとしても、イニシャルコスト(建設費)とランニングコスト(維持管理費)の両面で、存立が不可能なことは明白です。

以上のような極論を申し上げた理由は、過疎対策を模索する場合、@全ての機能を完備した「まち」をいたる所に創ることは不可能であることを認識した上で、Aシビルミニマム(生活最低保障)の行政サービスが提供されることを前提条件とし、Bどのような「まち」を望むのか、Cその「まち」を存立させるための最低限の人口が現存するのか、Dその「まち」を造り存続させるためにイニシャルコストとランニングコストの負担に耐えられる財政力があるのか否か、などの条件を満たす必要があるからです。

 つまり、過疎対策とは単に過密にすることではなく、住民がどのような「まち」を望み(住民の価値観)、その「まち」が人口とコストの両面から実現可能かどうかの問題に置き換えることができます。そして、その「まち」では実現できない機能は、大都市に任せざるを得ないのです。

こうした事柄を踏まえ、私は3市1町の合併が契機となって、従来のように「お上」任せではなく、むしろ自分たちの住むまちの「自立したまちづくり」の第一歩を、住民が踏み出すことを期待しています。そして、そのことが取りも直さず過疎対策の最短の道であると考え、「研究会」はその先駆者となっていただきたいと願っています。

 次に、「研究会」が添付した教育委員会の「小学校児童数の変化」資料に関する指摘ですが、瑞浪市の大湫や陶及び日吉は、それぞれ異なる文化や歴史、及び人口と産業を持っており、同一の対策では解決できません。このため、それぞれの地域の住民が、まず「どのようなまちを望むのか」を出し合い、次に行政がそのまちを造り存続させるために「どのような支援ができるのか」を検討しなければなりません。ですから、住民が自ら主体的かつ能動的に行動することが、「自ら望むまち」の実現には不可欠なのです。

 ところで過疎対策を語るときは、雇用の問題を避けて通るわけには行きません。工場を誘致し、住民の雇用と地方税収入を図りつつ、全国の均一な発展を目的としてきた従来の国の政策は、人件費が破格に安い中国の台頭によって破綻しました。さらに、工場誘致政策は自然環境や地球環境を破壊する恐れがあり、十分な検討や住民との合意も必要です。

 一方、今後、より一層明確に進んで行く少子高齢化社会や情報化社会では、新たな企業や雇用が生まれる可能性が大いにあります。少子高齢化社会では高齢者を対象とした福祉サービスの需要が益々増大します。また、成熟社会では高等教育や生涯教育と専門的訓練の需要が増加します。さらに、情報化社会では知的財産の価値が高まって、IT(情報技術)のソフトとハードに対する需要は増大こそすれ減ずることはないと、私は考えます。

これらの産業はいずれも大規模な工場を必要としません。また、これらの産業は、企業家や経営者がうまく機能分担を行えば、就業者は会社に通勤することなくSOHO(在宅勤務)で働くことが可能になります。極論すれば、経営者と就業者は設備投資や労働環境改善に大きなコストをかける必要がなくなり、行政は地域住民の生活環境のみを考慮すれば良い社会の到来も予想されます。

 いずれにしても、地域住民の雇用はそれぞれの地域で賄うのか、それとも工場誘致で確保するのか、さらには別の地域又は他の都市への通勤で確保するのか、という行政側の政策判断と住民自身の選択が必要になります。

 以上の事柄をまとめると、過疎問題のポイントは、@住民の雇用をどのように確保するのか、A住民はどのような「地域」を望むのか、Bこれらの2つの課題に対して、行政側がどのような支援ができるのか、という点に帰結します。そして、これらの問題は住民側が主導となり能動的に行動を起こさなければ進みません。何故なら、行政側はコスト面で手の施しようがないからです。

 次に、「研究会」は3市1町が合併すれば、瑞浪市から人口が流出し多治見市に一極集中が起こる可能性を指摘しています。もし瑞浪市から人口が流出するとすれば、その人口は多治見市に定着せず、恐らくストロー効果により名古屋市や東京都などの大都市に吸収されるものと予想されます。何故ならば、都市化現象において多治見市と瑞浪市の差よりも、東京都や名古屋市と瑞浪市との差の方がはるかに大きいからであります。

言い換えれば、人口の差は多治見市と瑞浪市の差はわずかに5万人ですが、名古屋市の人口は220万人で、東京圏のそれは1,000万人と桁が異なり、人口の差は都市のキャパシティ(容量)の差を示すからであります。

C 多治見と合併すれば、かえって瑞浪の負担が増えるかも? 数の論理から言って、多治見主導(瑞浪出身の議員が少なくなるため)になるかも? (参考資料として、多治見市の8月1日の広報誌に「いよいよ多治見の本音が出て来たようだ」の表題を付けて添付)

(見解) 「研究会」は被害意識が強すぎて合併協議会で合意されたことが見えなくなっているように思われます。それは投資的経費の配分方法と合併後の地域住民の意見反映の方法に異議を唱えていることから判ります。

そもそも、3市1町が設置した法定合併協議会は、人口規模が異なっても新設合併、つまり対等で合併することが合意されています。また、合併協議会で協議された新市建設計画や合併協定項目は、3市1町の住民の代表すなわち首長、助役、議員、住民代表が合意したもので、多治見市だけが故意に捻じ曲げて作成したものではありません。

以上の事柄を指摘した上で、投資的経費の配分方法は新市建設計画に則って、また合併後の地域住民の意見反映方法は合併協定項目に則って、順次私見を述べます。

8月1日号の多治見市広報には、合併の効果として多治見市の人件費の削減額、物件費の削減額、合併特例債の額、県の合併推進債の額、その他の支援費の額が、分かりやすくするため3市1町の人口比例によって決まったように記載されています。

 「研究会」は、この記事に対し「もう多治見の取り分を計算し始めていると思える。やっぱり金目当ての合併話だったのか? 人口が多ければ当然、議員の数も多くなる可能性が高い為、合併したらほとんど多治見の意見で進んで行く可能性が高い」と指摘しています。

 合併協議会で合意された新市建設計画は、合併特例債等による投資的経費の配分を次のように決めました。まず、3市1町の合併によって必要となる共通の経費を確保する。例えば、前述した新庁舎の建設や電子行政を行うのに必要な経費、そして3市1町が連携するために19号線のバイパスとして建設される都市間道路などの経費です。

 次に、残った投資的経費は各市町の既存の長期計画に記載されている事業に優先順位を付け、3市1町の人口と面積に比例して配分します。配分は投資的経費額が人口・面積比例で決められていますので、その範囲内であれば、どの事業を優先するかは、各市町が判断することになっています。その結果、各市町が優先した事業は、瑞浪市が上水道拡張事業、化石博物館等施設整備事業、道の駅整備事業、ケアハウス整備事業などであり、多治見市が駅周辺整備事業、学校施設新築・改築事業、学校給食施設整備事業、市民病院整備事業などです。

 これらの配分は、合併後の10年間の義務的経費を算定してから、投資的経費を算定するという過程を経なければならないので、多治見市だけが先に算定することは不可能であり、しかもこの配分方法は各首長も助役も議員も同意した方法であります。したがって、「研究会」がこの配分方法に異議を申し立てるのであれば、その矛先は多治見市ではなく合併協議会もしくは瑞浪市に向けられるべきものであります。

さらに付け加えるならば、配分は人口と面積の比例で投資的経費が決められていますので、面積の広い瑞浪市は多治見市よりもかなり有利に配分されています。例えば、合併協議会が算定した市町別事業費を人口1人あたりに換算すると、瑞浪市が約100万円に対し多治見市は約47万円であります。これらの資料も合併協議会から公表されています。

 次に、合併後の住民意見反映の方法について述べます。

「研究会」は、合併すると人口の多い多治見市の議員が多くなり、新市は多治見の意見に支配されると危惧しています。この意見は1人1票の平等の原則を無視しています。国政選挙で1票の格差是正が叫ばれている中で、「研究会」は格差有意の正当性を主張しています。この主張には同意できません。

 そうは言いましても、人口の少ない地域の意見を尊重することは大切です。合併協議会は合併後1年4ヶ月間に限り、現議員が在職するいわゆる在任特例を採用しました。採用の理由は、この在任特例期間の間に合併協定項目や新市建設計画に盛り込めなかった地域の特殊事情を、新市に反映さようという主旨からであります。

 1年4ヶ月の在任特例期間が過ぎれば、その後定数を80人から36人に減じた通常の市議会議員選挙が行われます。合併協議会は選挙区を設置しないことを決めました。当然、人口の少ない地域から立候補する市議会議員は選挙で不利になります。しかし、その構図は多治見市でも同じであります。

瑞浪市から見れば南姫や市之倉、滝呂、小名田・高田もすべて多治見市ということになりますが、合併するとこれらの地域からも市議会議員を出せなくなる可能性があります。この構図は瑞浪市の大湫や陶、日吉も同じのはずです。

 ところで、昨年の11月に政府の地方制度調査会は、「基礎的自治体の中に地域自治組織を設置することができる」と答申しました。合併特例法に伴う「地域審議会」が人口の少ない地域の意見反映の場であるのに対し、「地域自治組織」とは「近接及び補完の原理」により地域で発生する住民ニーズ(需要)はできるだけ身近なところで供給しようとするもので、自立型の自治組織であります。

 これらの制度は、地域住民からの意見を議員が代弁し徴集する従来の方法を、地域審議会や地域自治組織などの制度によって徴集する方法に切り替えようとしていることを意味しています。そして、市議会議員には予算や条例の審議そして政策立案能力の発揮など、議員本来の仕事に専念することを期待しているようであります。こうしたことから、もう既に議員による口利き行政は、時代に適合しなくなりつつあると、私は考えています。

D 区長、町内会長各位への「不安な事」の中に、Dはありませんが、資料の2枚目に「3市1町の合併に反対します」と題した資料が添付されています。この資料にも誤解がありますので、私見を述べたいと思います。

 この資料を見ると、「公共事業を大幅に減らして、職員を30%減らす位の大リストラをしなければ、合併効果など期待できません。ところが、そんな事なら合併しなくても、やる気になれば、それぞれの街で、今すぐにでもやれると思いませんか」と述べています。

 「研究会」は、@公共事業を大幅に減らせ、A職員を30%減らせ、Bそれらのことは、やる気になれば今すぐにできる、と主張しています。それらについて順次、見解を述べます。

@ 公共事業を大幅に減らせの主張ですが、合併で計画している事業は先ほど述べたように各市町の長期計画に記載されているものです。そして、この長期計画は、住民が行政に要望し、それを受けて各首長が提案し、各市議会が合意し議決したものです。ですから、「研究会」のこの主張は、各市町の住民の要望を実現するなと言うことに等しいものです。その事を承知で主張されるなら、それは自由ですが、私は各市町の住民の要望はできるだけ実現したい。そのために合併が必要だと考えているのです。

A 職員を30%減らせとの主張ですが、これは全く乱暴です。職員は全市民に公平中立の立場で、首長や市議会議員などの政治家の意見を聞くことが義務付けられています。また、職員自らの保身のために行政を歪めてはならないという考え方から、法律に違反しないかぎり首を切られることがなく、職員は身分が保障されています。このため、反面では自らの待遇改善等で労働争議を行う行為は法律により禁じられています。

 

そこで合併協議会は、このような事情から職員の削減を次のような方法で実施する予定です。つまり毎年退職者総数の半分しか新規雇用を行わない。それを10年継続して300人の職員を削減しようとしています。半分の新規雇用を行うのは職員間の年齢構成に偏りが出ないように配慮するためです。

B それらのことは、やる気になれば今すぐにできるとの主張ですが、@とAでおわかりのように、民間では全ての権限を社長が握っていますが、行政では法律が権限を握っていますので法の制約条件により、どなたが首長をおやりになっても、今すぐにはできないのです。

 次に、「研究会」は合併特例債によって子供達につけを回す借金政策はもうやめましょう、と主張しています。仰せのとおり子供達に借金を回すことは避けたいのですが、これも先ほど述べたように、自治体は無借金経営ができない仕組みなので、学校を造るにも上下水道を整備するにしても、道路を建設するにしても、全て地方債を起債、つまり借金をしなければなりません。ましてや、社会資本の整備には次世代の方にも負担していただきたいという考え方もあります。したがって、どうせ借金をしなければならないのであれば、自治体にとって最も有利な合併特例債を使いたいと、私は主張しているのであります。

 さらに、「研究会」は土岐市と瑞浪市との合併なら大賛成と主張しています。その理由は住民同士も似た者同士で、気心も感覚もほぼ同じような所があり、きっとうまくやっていけると信じます、と主張しています。

 ここでも、「研究会」は市町村合併そのものを誤解しています。合併とは、自立可能な自治体の大きさで住民本位の行政を進め、必要とされる行政サービスを最小のコストで実現するための作業です。決して、気心が知れているから、仲が良いから合併するのではありません。仮に今後、合併しないまま少子高齢化社会になっても行政サービスを低下させずにやっていけるのであれば、このように多大なエネルギーを必要とする合併は行う必要がありません。

近い将来、どのように頑張っても行政サービスを低下せざるを得ない、または受益者負担の原則に則って公共料金を値上げせざるを得ない時代が来ます。しかも、今のままでは情報化社会、少子高齢化社会、地方分権の時代に適合できません。

私はその究極の対策として合併を主張しているのです。繰り返しになりますが、似た者同士で気心も感覚も共有できるから合併するのではありません。もちろん、その方が合併しやすいことは間違いのないことですが。

 さらにもう1点、「研究会」が希望するように、今から土岐と瑞浪が合併を進めたとしても、合併する自治体の数と人口が半減しますので、合併特例債のメリットも半減します。しかも、今からの新設合併の作業は合併特例法の期限に間に合いません。期限に間に合わないということは、自治体にとって最大のメリットである合併特例債が使えず交付税も削減されるため、合併のメリットがほとんどなくなってしまいます。

なぜ期限に間に合わないかの理由ですが、合併特例法の立法期限が切れる平成17年3月31日までに、今後、土岐市と瑞浪市の法定合併協議会を立ち上げ、合併協定項目で合意し、新市建設計画を策定し、首長の調印、市議会の議決、県への申請、県議会の議決等の手続きを経るには、あまりにも期間が短すぎるからであります。

以上


 

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